キバナアザミが作る経口投与可能な成分クニシンの神経再生促進効果が判明
 ・ 誤解を訂正しました(オオアザミ→キバナアザミ)。
Rocheの年2回皮下注射Ocrevusが多発性硬化症の再発や脳病変をほぼ完封
 ・ Ocrevus静注が承認済みである旨追記しました。
血流の妨げはないが危うい冠動脈硬化巣の経皮冠動脈インターベンションが有効
 ・ 誤記を訂正しました(再度の血行再建→血行再建)
コメント一覧

[記事]中途終止コドン(premature termination codon)を選択的にバイパスできる低分子化合物・PTC124は多くの遺伝性疾患の治療薬として有望」へのコメント

  • このページの後半に、上記トピックの本文を掲載しています。
  • 投稿者名をクリックすると、その方が今までに投稿されたコメントを一覧表示します。

新しくコメントする

「PTC124はとても重要な2つの選択性を有している」

コメントする

BioToday.comでも何度か紹介しているPTC社のナンセンス変異バイパス化合物・PTC124の最新の研究成果が発表されています。

 ▽中途終止コドン(premature termination codon)を選択的にバイパスできる低分子化合物・PTC124は多くの遺伝性疾患の治療薬として有望
  http://www.biotoday.com/view.cfm?n=19326 

今回発表された研究から、筋ジストロフィーマウスにPTC124を投与するとジストロフィンの生成が亢進し、筋肉機能が正常化することが確認されています。

このPTC124はとても重要な2つの選択性を有しています。

1つはmRNAの品質管理機構には影響を及ぼさずにmRNAの生産的な翻訳のみに作用するという選択性で、もう1つは正常な終止コドンではなくて中途終止コドンのみに作用するという選択性です。

ここで、自分の勉強もかねて前者の選択性について少し解説します

【PTC124はmRNAの品質管理機構には影響を及ぼさない】

真核生物は、ナンセンス変異によって生じる有害なタンパク質を除去する2つの方法を備えています。

1つは中途終止コドン(PTC)を含むmRNAの翻訳によってできてしまった短いタンパク質を効率的に除去することです。

もう1つは、短いタンパク質ができる前に、PTCを含むmRNAを分解させてしまう方法です。この方法では、NMD(ナンセンスを介したmRNA崩壊)という品質管理機構によってPTCを含むmRNAが除去されます(1)。

後者の方法では、新たに合成されたmRNAが“先駆的”翻訳においてリボゾームにスキャンされることで中途終止コドン(PTC)が認識されます(2)。

実際にタンパク質が合成される“生産的”翻訳とは異なり、“先駆的”翻訳ではリボゾームはmRNAのスキャンのみを実施します。

薬剤によってPTCの読み飛ばしをするにあたっては、生産的翻訳での早期翻訳中止を抑制して翻訳の効率を上昇させる方法と先駆的翻訳でのPTC認識を抑制して生産的翻訳が可能なmRNAの量を増やす方法の2通りが想定されます。

どちらも最終的にはタンパク質の量が増えますが、後者の方法では変異タンパク質や変異mRNAが増えてしまう可能性があります。

今回Nature誌に発表された新たな研究から、PTC124は幸運にも生産的翻訳をしているリボゾームを標的にし、NMDに関与しているリボゾームには干渉しないと示唆されました。

この点で、リボゾームによるPTCの読み飛ばしを促進する作用があることが10年以上前から知られている抗生物質・ゲンタマイシン(3)とPTC124は異なります。

ゲンタマイシンはNMDの基質として知られる幾つかのmRNAのアップレギュレーションを誘導してしまうのです。

【補足】

リボゾームがPTCを見分ける方法は、RNAのスプライシングと密接な関連があります。

RNAのスプライシングでは、イントロンが取り除かれてエクソン同士がくっつくことでmRNAができます。

エクソン同士の結合部位はエクソン-ジャンクション複合体によって標識されます。

リボソームは、この複合体の上流55塩基を超える部分の終止コドンをPTCと認識します。

このようにして正常な終止コドンとPTCが識別されます(4)。


(1)The Nonsense-Mediated Decay RNA Surveillance Pathway. Annu Rev Biochem. 2007 Mar 12; [Epub ahead of print]
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=pubmed&cmd=Retrieve&dopt=Abstract&list_uids=17352659&q
\nuery_hl=14&itool=pubmed_docsum


(2)Evidence for a pioneer round of mRNA translation: mRNAs subject to nonsense-mediated decay in mammalian cells are bound by CBP80 and CBP20. Cell. 2001 Sep 7;106(5):607-17.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?holding=npg&cmd=Retrieve&db=PubMed&list_uids=11551508&dop
\nt=Abstract


(3)Aminoglycoside antibiotics restore CFTR function by overcoming premature stop mutations. Nat Med. 1996 Apr;2(4):467-9.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=pubmed&cmd=Retrieve&dopt=Abstract&list_uids=8597960&qu
\nery_hl=18&itool=pubmed_docsum


(4)A rule for termination-codon position within intron-containing genes: when nonsense affects RNA abundance. Trends Biochem Sci. 1998 Jun;23(6):198-9.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?holding=npg&cmd=Retrieve&db=PubMed&list_uids=9644970&dopt
\n=Abstract

コメントする

2007-04-24 - 停止コドン(UAA, UAG, UGA)を発生させて早期翻訳中止を促進するナンセンス変異(ノンセンス変異)は、嚢胞性線維症や筋ジストロフィーを含む多くの遺伝性疾患を引き起こします。
会員様ログイン
メール会員(無料)募集中

メール会員登録(無料)をされますと、BioTodayに登録された記事を毎日メールでお知らせします。また、メール会員登録されますと、毎週月曜からの一週間あたり2つの記事の全文閲覧が可能になります。

メール配信を希望される方は、以下の欄にメールアドレスを入力下さい。

◇メール会員登録までの流れ

  1. メールアドレスを入力
  2. 入力したメールアドレスに自動生成されたパスワードが届けられる

後は、自動生成されたパスワードと登録したメールアドレスでログインすると毎週月曜からの一週間あたり2つの記事の全文閲覧が可能になります。

質問検索
BioToday 非会員の方へ

質問を投稿して頂くには、メール会員登録が必要です。

会員登録がお済みの方へ

質問を投稿して頂くには、ログインが必要です。
下記のリンクからログインしてください。

My Book

バイオを応用して開発中の新薬を紹介した本です。2001年10月に出版したものです。Amgen社のEPOGEN誕生の経緯やグリベック誕生までの道のりなど、現在販売されているバイオ医薬品の歴史について知りたい方には役に立つのではないかと思います。