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老化に伴う難聴を脳のコレステロール補強で防ぎうる

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2023-08-28 | コメント

老化と関連する失聴は大きな問題であり、65歳を超える高齢者のおよそ3人に1人が多かれ少なかれ難聴を被ります。難聴は聞こえにくくなるという不便さを強いることに加えて認知機能低下が早まることや認知症リスク上昇とも密接に関連します。

そういう大きな問題をはらむ老化関連難聴をコレステロール補強といういとも手軽な方法で防げるかもしれないことが南米アルゼンチンのチームによるマウス実験で示されました。

巷でコレステロールと言えば悪者と相場が決まっていますが、神経細胞膜の要員の一つであり、神経細胞や膜連携蛋白質の機能に不可欠です。

コレステロールはシナプス膜に豊富で、蛋白質複合体の数々に結合したり影響を及ぼしてそれらの構造、振る舞い、活性を調節することが最近の研究で示されています。

シナプス形成、細胞間相互作用、細胞内伝達に与するコレステロールを中枢神経系(CNS)は手ずから生成します。というのも末梢のコレステロールは血液脳関門(BBB)を通過できず、CNSは他所から調達することができないからです。

ゆえに脳のコレステロール濃度は厳密に調節されており、その調節の乱れは認知機能障害や種々の神経変性疾患と関連することが知られています。

脳のコレステロールは老化の影響も受けます。たとえば老化に伴って海馬のコレステロールが減ります。また、老人や神経編疾患患者の脳のコレステロールは乏しいという検体解析結果も報告されています。

老化と関連するコレステロール減少の原因の一つは海馬でのコレステロール水酸化酵素CYP46A1の増加です。マウス海馬シナプスの老化に伴うコレステロール減少が主にCYP46A1亢進に起因し、シナプス受容体の行き来や陥入を立ち行かなくし、記憶障害をもたらすことが確認されています。注目すべきことに、脳のコレステロールを底上げすることで老化マウスのシナプスや認知機能の不備を減らしうることが示されています。また、神経変性疾患の治療効果もあるらしく、ハンチントン病マウスのシナプスや認知機能が脳へのコレステロール運搬粒子で改善しました。

老化と関連する聴覚消失(ARHL)は内耳の蝸牛の外有毛細胞(OHC)の損失を発端の一つとします。音の増幅に携わるOHCの側壁は厳密な管理下のコレステロールを含み、OHC側壁のコレステロール含量の変化はOHC側壁内のモーター蛋白質プレスチンの機能や分布に影響を及ぼすようです。

しかし内耳の病変にコレステロール変動がどう寄与しているかはこれまで調べられたことはありません。

そこでアルゼンチンのブエノスアイレス大学のチームはコレステロール欠乏が内耳蝸牛の老化病変に寄与するとの仮説を立て、若いマウスと老化マウスの内耳のCYP46A1とコレステロール量を調べてみました。

すると予想通り高齢マウスの内耳のCYP46A1は若いマウスに比べて多く、コレステロールは逆に減っていました。

続いて若いマウスのCYP46A1を過剰に活性化するとどうなるかがその調べられました。その実験にはCYP46A1を活性化することが知られるHIV薬efavirenz(エファビレンツ)が使われました。

若いマウスにエファビレンツを投与したところ果たしてOHCのコレステロールが減り、プレスチンの分布がおかしくなり、難聴がもたらされました。

そして研究は脳のコレステロール補強の効果検討という重要局面を迎えます。若いマウスへのエファビレンツ投与に伴う難聴を脳のコレステロール補強で防げるかどうかが調べられました。

上述の通りコレステロールは血中から脳に入れません。そこでコレステロールに似た構造と働きをし、BBBを通過して脳に到達できる植物ステロールに白羽の矢が立てられました。

ここでも狙い通りの結果が得られ、エファビレンツ投与マウスに植物ステロールを食べさせたところOHC機能が改善し、プレスチンの分布も正常化しました。

抗レトロウイルス薬使用HIV/AIDS患者に聴覚障害が多いことが報告されています。最近ではエファビレンツがその治療の一翼を担うことが多く、その長期使用は聴覚を損なわせるかもしれません。

抗レトロウイルス薬治療HIV/AIDS患者に難聴がどういう仕組みで生じるかははっきり分かっていませんが、今回の結果によると植物ステロールがその予防や治療に役立つかもしれません。

また、植物ステロールの服用は老化と関連する難聴の手軽な予防法となる可能性もありそうであり、動物やヒトでの更なる検討が期待されます。

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