Gamida Cell社の血液癌治療臍帯血製品Omidubicelを米国FDAが承認
 ・ 抜けていた製品名Omisirgeを追記しました。
化学放射線療法とMerck & CoのKeytrudaによる子宮頸癌初治療が生存改善達成
 ・ 誤記を訂正しました(陰性か陰性か→陽性か陰性の)
Novartisの発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)薬Fabhaltaを米国が承認
 ・ 誤解訂正。Fabhalta投与患者”殆ど”がヘモグロビン濃度2 g/dL以上の上昇を達成した旨に修正しました。

Arf活性化因子・サイトヘシンを阻害するとインスリン抵抗性が生じる

  • 2006-12-18 - マウスでの研究から、SecinH3という低分子化合物でArf(ADPリボシル化因子)活性化因子・サイトヘシン(Cytohesin)を阻害するとインスリン抵抗性が生じると分かりました。 (3 段落, 266 文字)
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2006-12-18 | 投稿者 : 清宮さん
Arf活性化因子・サイトヘシンを阻害するとインスリン抵抗性が生じると分かりました。

 http://www.biotoday.com/view.cfm?n=16921

以下、この報告に関連して少し解説します。

◇Arfとは?

Arf(ADPリボシル化因子)タンパク質は、細胞膜上でのタンパク質複合体の構築をコントロールし、細胞中のタンパク質の輸送や膜に関連したシグナル伝達イベントを制御する分子スイッチです。

ArfはGDPが結合しているときには不活性化状態にあり、GTPに結合すると活性化します。

Arfの活性化にはグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)の触媒作用によるGDPからGTPへの交換が必要です。

サイトヘシンは、Sec7ドメインと呼ばれる触媒領域を有するArfのGEFです。

Sec7-ドメインタンパク質巨大ファミリーは、細胞の至るところでシグナル伝達や膜輸送において重要な役割を担っています。


◇サイトヘシンとインスリンシグナル伝達

今回の実験から、培養肝細胞での実験において、サイトヘシンをSecinH3で阻害するとインスリン受容体欠損細胞と似た遺伝子発現プロフィールを示しました。

また、SecinH3を与えたマウスは、肝臓のインスリン受容体を欠いたマウスと似た特徴を示しました。具体的には、SecinH3を与えたマウスではインスリン抵抗性の徴候が認められました。


◇サイトヘシンはインスリンシグナル伝達経路のどこに作用するのか?

インスリンがインスリン受容体に結合すると、インスリン受容体基質タンパク質の一群がリン酸化され、脂質キナーゼ・PI3Kが動員・活性化されます。

PI3Kはphosphoinositide PIP2をPIP3に変換します。PIP3は、タンパク質キナーゼ・AKT/PKB等のプレクストリン相同ドメイン(PHドメイン)を有するタンパクによって認識されます。

AKT/PKBは、インスリン感受性遺伝子の発現を制御している転写因子・FOXO1を含む様々なターゲットをリン酸化します。

ショウジョウバエの実験で、サイトヘシンはPI3Kの上流で作用することが示されています。哺乳類細胞では、SecinH3はインスリン受容体によるインスリン受容体基質1のリン酸化を阻害しました。

さらに、免疫沈降実験により、インスリン受容体は物理的にサイトヘシン(ARNOとcytohesin-3)とその基質の1つ・Arf6と結合していることが示されました。

これらの結果から、サイトヘシンはインスリンカスケードの非常に初期の段階で作用すると示唆されました。


◇PIP3とサイトヘシンのフィードバック機構

インスリン刺激で生成されるPIP3によって、Arf1とArf6と共にサイトヘシンは細胞膜に動員されます(1)〜(3)。

インスリンまたはその他の成長因子による刺激前には、細胞にはPIP3が存在しません。

このことから、インスリンシグナル伝達カスケードによるPIP3の生成によって、PIP3豊富な膜領域へとサイトヘシンを動員する正のフィードバックループが存在している可能性があると考えられました(4)。


◇スケールの大きなインスリンシグナル伝達機構が存在する?

今回Nature誌に発表されたショウジョウバエの実験では、サイトヘシン遺伝子変異体では細胞の縮小、細胞数低下、体重低下などが認められています。

インスリンは主に代謝を調節する因子と考えられていますが、今回の結果から、代謝を超えた個体の生命活動全般にインスリンシグナルが関与しているのではないかと感じました。

未知の個体全体を貫くスケールの大きなインスリンシグナリングの全容の一部が今回の研究から明らかになった、そんな感じがしています。(終)

(1)Cullen, P. J. & Chardin, P. Curr. Biol. 10, R876R878 (2000).
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?holding=npg&
\ncmd=Retrieve&db=PubMed&list_uids=11114537&dopt=Abstract

(2)Czech, M. P. Cell 100, 603606 (2000).
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?holding=npg&
\ncmd=Retrieve&db=PubMed&list_uids=10761925&dopt=Abstract

(3)Li, H. S. et al. BMC Cell Biol. 4, 13 (2003).
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?holding=npg&
\ncmd=Retrieve&db=PubMed&list_uids=12969509&dopt=Abstract

(4)Diabetes: kicking off the insulin cascade. Nature. 2006 Dec 14;444(7121):833-4. Arf活性化因子・サイトヘシンを阻害するとインスリン抵抗性が生じると分かりました。

 http://www.biotoday.com/view.cfm?n=16921

以下、この報告に関連して少し解説します。

◇Arfとは?

Arf(ADPリボシル化因子)タンパク質は、細胞膜上でのタンパク質複合体の構築をコントロールし、細胞中のタンパク質の輸送や膜に関連したシグナル伝達イベントを制御する分子スイッチです。

ArfはGDPが結合しているときには不活性化状態にあり、GTPに結合すると活性化します。

Arfの活性化にはグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)の触媒作用によるGDPからGTPへの交換が必要です。

サイトヘシンは、Sec7ドメインと呼ばれる触媒領域を有するArfのGEFです。

Sec7-ドメインタンパク質巨大ファミリーは、細胞の至るところでシグナル伝達や膜輸送において重要な役割を担っています。


◇サイトヘシンとインスリンシグナル伝達

今回の実験から、培養肝細胞での実験において、サイトヘシンをSecinH3で阻害するとインスリン受容体欠損細胞と似た遺伝子発現プロフィールを示しました。

また、SecinH3を与えたマウスは、肝臓のインスリン受容体を欠いたマウスと似た特徴を示しました。具体的には、SecinH3を与えたマウスではインスリン抵抗性の徴候が認められました。


◇サイトヘシンはインスリンシグナル伝達経路のどこに作用するのか?

インスリンがインスリン受容体に結合すると、インスリン受容体基質タンパク質の一群がリン酸化され、脂質キナーゼ・PI3Kが動員・活性化されます。

PI3Kはphosphoinositide PIP2をPIP3に変換します。PIP3は、タンパク質キナーゼ・AKT/PKB等のプレクストリン相同ドメイン(PHドメイン)を有するタンパクによって認識されます。

AKT/PKBは、インスリン感受性遺伝子の発現を制御している転写因子・FOXO1を含む様々なターゲットをリン酸化します。

ショウジョウバエの実験で、サイトヘシンはPI3Kの上流で作用することが示されています。哺乳類細胞では、SecinH3はインスリン受容体によるインスリン受容体基質1のリン酸化を阻害しました。

さらに、免疫沈降実験により、インスリン受容体は物理的にサイトヘシン(ARNOとcytohesin-3)とその基質の1つ・Arf6と結合していることが示されました。

これらの結果から、サイトヘシンはインスリンカスケードの非常に初期の段階で作用すると示唆されました。


◇PIP3とサイトヘシンのフィードバック機構

インスリン刺激で生成されるPIP3によって、Arf1とArf6と共にサイトヘシンは細胞膜に動員されます(1)〜(3)。

インスリンまたはその他の成長因子による刺激前には、細胞にはPIP3が存在しません。

このことから、インスリンシグナル伝達カスケードによるPIP3の生成によって、PIP3豊富な膜領域へとサイトヘシンを動員する正のフィードバックループが存在している可能性があると考えられました(4)。


◇スケールの大きなインスリンシグナル伝達機構が存在する?

今回Nature誌に発表されたショウジョウバエの実験では、サイトヘシン遺伝子変異体では細胞の縮小、細胞数低下、体重低下などが認められています。

インスリンは主に代謝を調節する因子と考えられていますが、今回の結果から、代謝を超えた個体の生命活動全般にインスリンシグナルが関与しているのではないかと感じました。

個体全体を貫くスケールの大きな未知のインスリンシグナリングの全容の一部が今回の研究から明らかになった、そんな感じがしています。

(1)Cullen, P. J. & Chardin, P. Curr. Biol. 10, R876R878 (2000).
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?holding=npg&
\ncmd=Retrieve&db=PubMed&list_uids=11114537&dopt=Abstract

(2)Czech, M. P. Cell 100, 603606 (2000).
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?holding=npg&
\ncmd=Retrieve&db=PubMed&list_uids=10761925&dopt=Abstract

(3)Li, H. S. et al. BMC Cell Biol. 4, 13 (2003).
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?holding=npg&
\ncmd=Retrieve&db=PubMed&list_uids=12969509&dopt=Abstract

(4)Diabetes: kicking off the insulin cascade. Nature. 2006 Dec 14;444(7121):833-4.(PubMed側でのエラーと思われますが、以下のリンクは適切に表示されません。ご了承ください。)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=pubmed&cm
\nd=Retrieve&dopt=AbstractPlus&list_uids=17167468&query_hl=1
\n7&itool=pubmed_docsum

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=pubmed&cm
\nd=Retrieve&dopt=AbstractPlus&list_uids=17167468&query_hl=1
\n7&itool=pubmed_docsum
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