アルツハイマー病のオリゴマー仮説に到るまでの経緯や今後の展望
- 2010-07-30 - 可溶性Aβオリゴマーがアルツハイマー病の主因として有力視されていますが、そのようなオリゴマー仮説が支持されるに到るまでの研究の経過や今後のアルツハイマー病治療の展望をまとめた記事が発表されました。 (2 段落, 249 文字)
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HA濃度が高濃度の場合は認知障害を引き起こす可能性はあります。
HAのアミロイド生成誘導については、ガンマーセクラターゼと同様にアミロイド生成でアミロイド42の生成をHAは誘導します。生成したアミロイド42は神経細胞内に蓄積しています。その結果神経細胞の機能が低下し、タウタンパクの誘導を引き起こして神経細胞死を引き起こすというメカニズムを考えています。しかしその細胞死を誘導するにはある程度の濃度が必要ですが、アミロイドの細胞内蓄積はかなり低濃度のHAで可能です。
以上です。
長谷川
素人的な質問ですが、HAと認知障害について教えてください。
ApoE4(+)でアミロイド班がないのに認知機能障害が強い症例はあるのでしょうか?
患者さんにみられるものと相当する濃度のHAは、アルツハイマー病と同程度のシビアな認知機能障害を惹起するのでしょうか?
(すいません、文献を読めばいいのですが、伺った方が早いかと思いまして・・・)
それと、HA→アミロイドのメカニズムが分かっていたら簡単に教えていただけると幸いです。
アミロイド仮説は今までアルツハイマー病の主流をなしてきました。しかし最近のアミロイド療法の臨床試験で認知機能回復が出来なかったという結果は、仮説に対する多くの疑問を提起しました。現在アミロイド仮説はオリゴマー説に変化してきています。
オリゴマー仮説はシナプスへの障害を発現させて、記憶障害の発現を促します。そしてオリゴマーが神経変性をも誘導するという処が未だ?です。
またアミロイド療法につながるものとしてタウたんぱくの凝集による神経変性の過程がある訳ですが、このタウたんぱくへの治療も現在進行中です。
アミロイドからタウまでの一連の神経変性の進行が現在の治療の標的になっているのですが、私達のHAワクチンはどの位置にあるのでしょうか。それはアミロイドの生成を促す上流にHAは位置しております。
ですから図で示しますと、
HAーアミロイドータウたんぱくー神経変性
HA−神経変性
HAからアミロイドの流れとHA単独での神経変性への流れの二つです。
ApoE4(−)はHAからアミロイドへの流れでHA濃度は低いです。
ApoE4(+)はHAの二つの流れが含まれており、HA濃度は高いです。
ここで注解しますが、実際ApoE4(−)/(+)の尿中HA濃度は異なります。ApoE4(+)の方はHA濃度が高いです。
ではアミロイド療法でアミロイドを消しますと、ApoE4(−)ではHAが残りますが、HA単独の毒性は濃度が低いので発現しません。ですからアミロイド療法は効果が見れます。これがマウスの場合と同じです。
ApoE4(+)ではアミロイドを消しても、HA単独の毒性がHAの高濃度で発現していますので、アミロイド療法では効果がみれません。
ですから、アミロイド療法とHAワクチンの組み合わせが一番ベストです。
またタウへの治療でも上の図で明らかなように、ApoE4(-)では効果が見れても、ApoE4(+)ではHA単独の毒性が残りますので、タウの治療だけでは効果がみられません。
結論として、ヒトの場合は特にApoE4(+)の場合はアミロイド療法だけでなく、他の治療法の組み合わせが必要でしょう。
以上です。先生のご指摘により、本当に勉強になりました。ありがとうございます。
長谷川
私が申し上げたかったのは、
1. HA誘導の有害物質蓄積による認知機能障害
2. HA単独の認知障害
を使うとApoE4の有無に関わらず、どちらに転んでも結局は、HAが認知障害の主因であることになり、話しがうますぎるなぁと素直に感じてしまったということです。
(HAが単独もしくは媒介として認知機能障害に関与しているのは疑いのないことだとは思いますが、どんな条件でも[=Apo蛋白の種類にかよらず]主因であると搦め手で説明されてしまうとちょっと抵抗したくなるのです)
済みません、ベータアドレネナジックの受容体→HA生成酵素活性化を認めるとしても、ApoE4(+)→ベータアドレネナジックの受容体が活性化のプロセスでギャップ(因果論的飛躍)があるような気がするのですが。。。
認知機能障害はオリゴマーやHAのみでは到底説明がつかない複合的な現象だとは思いますが、少しずつでも関与するプロセスが分かってくるとわくわくしますね。今後のご活躍を祈念致します。
またApoE4(+)に関しては、一つは不安症とApoE4(+)が関係している論文や、ストレス反応の増大とApoE4(+)が関係している事など、論文が報告されています。そこでHA生成に関して、ベータアドレネナジックの受容体が活性化されると、アストロサイト(HA生成酵素、CBSが局在)から対照時の4−5倍の濃度のHAが遊出してくる事は報告されています。ですからApoE4(+)でHA濃度が高濃度になってきます。
以上がhmori-tkyさんのご質問にお答えいたしました。いずれにしても、アミロイドに取って代わるHAの毒性が興味を引きます。
また,「HAの神経機能障害」といった場合,コメント記載では
1. HA誘導の有害物質蓄積による認知機能障害,
2. HA単独の認知障害,
の2種類があると読めますが,HA濃度が高いと「HA単独の認知障害」が発現すると突然言われても虫が良すぎる気がします.
最後に,Apo蛋白はHA運搬も行っているのでしょうか.つまり「ApoE4(+)ではHA濃度が高濃度にな」る根拠が求められます.
ヒトの場合、ApoE4(−)ではHA濃度が低いです。HAが低い場合、HA誘導のアミロイド生成、細胞内アミロイド蓄積、そして神経機能障害の発現=認知機能障害があり、アミロイド療法でアミロイド除去すれば、HAの神経機能障害が抑制され、ある程度認知機能の回復が見られます。確かに臨床試験でもApoE4(−)ではある程度成功していますが、ApoE4(+)では効果が見られません。それはApoE4(+)ではHA濃度が高濃度になり、アミロイド除去でもHA単独の認知障害が発現するからです。ですからヒトとマウスの病理で同じなのがApoE4(-)であり、ApoE4(+)ではマウスとヒトでは病理が異なる事が報告されています。ですからヒトの場合、HAの毒性を考慮する必要があるのです。