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睡眠薬ゾルピデムは睡眠中の脳の洗浄を妨げるらしい

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2025-01-10 | コメント

アドレナリンの弟分の分子ノルアドレナリンの周期的放出と連動した血管収縮が睡眠中の脳の老廃物を除去する脳脊髄液(CSF)流を生み出していることがマウスでの検討で示されました。

また、定番の睡眠薬ゾルピデム(zolpidem)は具合の悪いことにノルアドレナリンの周期的放出を抑制して脳のCSFの流れを妨げるようです。

脳には液を集めて移動させるリンパ管がありませんが、それに代わるグリンパティック系という仕組みを備えます。グリンパティック系は脳を浸すCSFを血管に沿った細道を伝わせることで老廃物やその他の不要分子を洗い流します。グリンパティック系の流れは睡眠中に増えることが報告されています。

グリンパティック系の発見を2012年に報告したロチェスター大学のMaiken Nedergaard氏らは新たな研究で何が脳のCSFを流すのかを自然に眠るマウスを使って調べることにしました。

血管を収縮させる神経伝達物質であるノルアドレナリンの量がマウスの脳で周期的に変動しており、およそ50秒毎に最大になることが先立つ研究で知られています。

新たな研究の結果、体の組織が再生し、記憶や学習などの認知機能に不可欠な睡眠段階であるノンレム(NREM)睡眠のときにノルアドレナリン量の増減に応じて脳の血管が伸縮して血液量が増減し、CSFが脳に入ったり出ていったりすることが示されました。そのようにしてノルアドレナリンの変動はNREM睡眠時にポンプのようなグリンパティック系の働きを生み出します。覚醒しているときやREM睡眠時にはノルアドレナリンと血流量はあまり関連しませんでした。

ノルアドレナリンだけの働きではないだろうが、グリンパティック系の流れの最も重要な原動力しれないとNedergaard氏は言っています。人もマウスと同様に睡眠中にノルアドレナリンが周期的に放出されて血管が拍動するようであり、マウスと同様のポンプ機能が人の脳にもあるかもしれません。

先立つ研究でゾルピデムは睡眠中の脳の活動や睡眠段階の長さを変えるらしいことが示されています。また、ゾルピデムに限らず睡眠薬はほぼどれもノルアドレナリンの生成を抑制します。そこで、Nedergaard氏らはマウス6匹にゾルピデムを投与してその影響を調べました。その結果、ゾルピデムを投与したマウスはプラセボ投与マウスに比べて早く眠りについたものの、脳のCSFの流れが平均して30%ほど落ちていました。CSFの流れが滞ることは脳の洗浄が不調をきたすことを意味しており、ノルアドレナリンを抑制する睡眠薬は脳が不要物を排出するのを妨げるかもしれません。

今回の結果をもってゾルピデムの服用を止めるべきではありませんが、今ある睡眠薬が睡眠中の脳の毒素排出を実際に妨げるならそうしない新しい睡眠薬の開発が必要でしょう。さもなければ睡眠薬でむしろ睡眠が一層損なわれて脳が不調になってしまうかもしれません。

別のチームが最近発表した研究で睡眠中のマウスのノルアドレナリン量の周期的増減の幅が睡眠中の記憶増強に携わることも示されています。抗うつ薬の幾つかは睡眠薬とは反対に体内のノルアドレナリン量を上げる働きがあり、記憶に支障をきたすかもしれません。睡眠中のノルアドレナリン量の波に影響しない薬の開発が必要だと研究者は言っています

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